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こだわりは、「仕事の時間が美しく流れているかどうか」―― 働き方評論家・大学教員として活動する常見陽平さんが語る「時間の使い方」(前編)

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何事も全力に見える人が、あなたの周りにもいないだろうか。仕事に家事に育児、そして趣味までも。1日24時間と決まっている中で、一体彼らはどんな時間の使い方をしているのか、その秘訣を聞いてみることにした。


今回奥義を伝授してくれたのは、千葉商科大学国際教養学部で専任講師として教鞭を執りながらも、講演で全国を飛び回り、書籍やコラムの執筆もしている常見陽平さん。
「限られた時間の中でいかに全力で楽しむか」をモットーにしながら奔走する常見さんは、「働き方評論家」という肩書きを持ちながらも自身を「家畜」と称し、家事に育児に翻弄される姿すら隠さず見せる。一体、どんな時間の使い方をしているのだろうか。彼が考える「時間哲学」について、今回は紐解いていく。


【後編はこちら】
こだわりは、「仕事の時間が美しく流れているかどうか」―― 働き方評論家・大学教員として活動する常見陽平さんが語る「時間の使い方」(後編)

「その時間は、美しく流れているか」と問う


―― 単刀直入にお聞きします。常見さんが仕事も家庭も趣味も、全てにおいて全力で取り組めているのはなぜなのでしょうか?忙しすぎませんか?


常見さん(以下、敬称略):「忙しそうですね」と言われることは確かにあります。これは、若干反省していることでもあるんです。「忙しそうだから頼みづらいな」と思われてしまったりもするし。でも、「全てのことを全力でやれているか?」と問われると、正直言えば「もっと全力でやりたいです」と思っています。


―― 今以上に、ですか?


常見:例えば、明確に足りていないと思うのはインプットの時間ですね。やってはいるんですけど、もっと速くできないのかとか……あるいはもっと「深く集中して」なのか、もしくは「浅く広く」でもいいんですけど。ただ、「上手な時間の使い方」はできているように思います。もし、僕が何事も全力でできていると思われているとしたら、時間に関するこだわりがあるからかもしれません。


―― それはどんなこだわりですか?


常見:「時間が美しく流れるようにする」というものですね。


―― なかなか聞いたことのない言葉ですね。


常見:どういうことかというと、一日過ごす中で「気持ちや動きが止まっている時間を作らないための工夫をしている」ということなんです。僕でいうと「講義モード」「執筆モード」などの切り替えが必要なんですけど、講義の準備の時に本の執筆のことが頭の片隅にあったら、2倍以上の時間がかかってしまいますよね。僕たちは常に時間の制約と闘っているじゃないですか。


―― 自分ではコントロールできない時間も多いですよね。


常見:そう。仕事で会議に出ないといけない時もあれば、子どもの保育園の送り迎えや家事・育児もありますしね。


そこで考えるべきことは、「優先順位」と「クオリティー」です。ずるいけれど、「待ってもらえるのはどの仕事なのか」も考えています。石を投げられそうですけどね……。今日やらなくていいけれど、じわりと考えておかないといけないものはどれかも意識していますね。無駄な時間、追われている時間が少ないから、時間が美しく流れていくんです。


細かいですが、移動の時間も美しく流れるようにできるんですよ。移動距離が長いならば長いなりに昼寝して、休憩の時間にできたりしますよね。それも「時間が美しく流れるようにする」秘訣です。

時間哲学は、制約・強制の中で磨かれた


―― 「時間を美しく流れるようにする」という考え方を持ったのは、何がきっかけだったんでしょうか?


常見:営業をしていたときの経験が大きいですね。約20年前、リクルートで営業をしていた時の上司は行動管理が厳しい人で、一日5件のアポが必須だったんです。5件のアポって、じっくり商談していると1日で回るにはなかなか大変な数ですよね。「では、どうやったら5件いけるか、もしかしたら6件いけないだろうか」って考えると、例えば「近い場所でアポを集中させる」「ある沿線にアポを集中させる」という考え方に行き着くんです。


―― なるほど。


常見:そこが「時間を美しく流そう」と思った一つの経験だったと思います。さらに言うと、「それしか時間がないんだったら、合格点のクオリティーを定めよう」と考えたんです。


―― 自分から制約を作るんですね。


常見:一つの仕事に対して「何分以内で終えるようにしよう」と決めてしまう。「読書にかける時間」「書くのにかかる時間」など、自分の中で標準時間を設けているんですよ。例えば、1000文字ぐらいのエッセイ原稿なら30分で勢いで書こうとか。そうやって時間の使い方を意識するようにしていますね。

営業パーソンの「時間の主導権」の握り方


―― 営業時代に「時間を美しく流れるようにする」ために常見さんが行っていた工夫は、他にありますか?


常見:突発的なトラブル対応や急なチャンスで予定が変わることももちろんありましたが、さきほど例にも挙げたように、基本的にアポは同じ沿線か近い場所に集中させていました。A社のアポが終わった後、15分で次の会社に着けたら楽ですよね。「この日は銀座線沿線にして直帰」などの工夫もできます。


―― 効率を上げるための手っ取り早い手法ではありますが、あまり会社では教えてくれないことかもしれないですね。


常見:確かにそうかもしれません。営業の仕事って、お客さんに対して自分が下手に出ないといけない時もあるんですけど、お願いする側であってもアポでは主導権を握れるんです。これは、お願いされる立場から考えると分かりやすいと思います。この年齢になってくると、「僕の方が立場が上なのでは?」と思う若者からのアポの場合でも、「この日いかがでしょうか?」って日時を指定されたら、その中で調整しようとするんですよね。


―― アポを調整する側から、日程を提示してしまうのもありなんですね。


常見:もちろん「この日でお願いします」だと一方的で感じが悪くなってしまうので、「この日だと嬉しいです」みたいに伝えた方がいいですけどね。こうやって時間の主導権を握っていくと、「時間が美しく流れ始める」んですよ。何より疲れにくくなるんです。


―― 自分でコントロールできている感覚があると、同じ仕事をしていても疲れを感じにくいですよね。


常見:「この日は内勤デー」とか、「この日は東京の東側アポデーにする」とか、やり方はいろいろありますよね。例えば、僕は武蔵野美術大学での講義が火曜日にあるから、火曜日は「外出デー」なんですよね。「外で仕事するデー」とか自分の中でテーマ設定すると効果ありますよ。


この日は、朝からラジオ出演の後、千葉商科大学で講義の合間に取材に応じてくれた

採用担当者は面接で社会の流れを読める


―― 常見さんは忙しくても時間に追われているようには見えませんし、何より楽しそうですよね。


常見:「今この瞬間を楽しむ」っていうのは、大事にしています。うどんを食べている時はうどん以外のことを考えない、とか(笑)。いつもアクション映画の「難問をクリアした瞬間の音楽」が鳴っているようなイメージをしています。その日最後に送る仕事のメールの送信ボタンを押した瞬間、もうその後に一緒に飲む人のことしか考えない。


―― その時その時、目の前にあることに意識を集中させているんですね。ちなみに、常見さんはバンダイで採用担当もされていましたよね。俗に言うバックオフィス部門は、営業とはまた違った忙しさがあるのではないでしょうか?


常見:バンダイでは新卒採用担当を務めていました。採用は、こう言っては何ですが「嫌な忙しさ」でしたね(苦笑)。必ず面接に立ち会わないといけないとか、自分でコントロールしづらい仕事が多いんです。日付が決められている合同説明会にも出ていましたしね。採用担当者時代は、移動の時間こそ考える時間に充てていました。


―― 採用の業務は、まとまった時間が取りにくい仕事でもありそうですね。


常見:そうですね。だから意識していたのは「仕事をしながらインプットをすること」でした。


例えば、面接って最高の情報収集の場でもあるんです。Aさんという人を見極めて合否を出すだけじゃなくて、そこから世の中の変化の兆しを読んだりもできるんですよ。毎年採用シーズン最初の合同説明会なりイベントで学生と会った時に感じる違和感を、必ず答え合わせするようにしていました。毎年学生は入れ替わって、たった一年しか時計は進んでいないと思いがちですが、変化の兆しを見つけようと思うと「なんで今年から福利厚生のことをたくさん聞かれるようになったんだろう?」とか、気付きが絶対にあるんです。そこから調べていくと、時代、世代の特徴が見えてきたりするんですよ。それは面接の中で活かせますよね。

広報担当の経験で得た時間術は、「先回り」による効率化


―― 「仕事をする」という行為に複数の目的を持たせて、時間を有効活用しているんですね。


常見:そう、「一粒で二度おいしい」みたいにね。一つの時間で得があるようにしています。リクルート時代、出向先の合弁会社の広報担当だった時は、緊急対応で時間の主導権を持っていかれてしまうこともあったんですけど、それでも時間の使い方は工夫できるんです。取材を受ける時も、どんな資料があれば効率良く先方が取材できるかを考えていました。その頃の経験は今も活きていて、僕は何か聞かれた時に説明ができるブログをあらかじめ書いておくようにしているんです。


例えば、「経団連から就職活動時期に関するニュースが出た」と情報をキャッチしたら、ブログでそれに関する記事を書いておいて、いざ取材が来たら「それについては、取材前に○日のエントリーを見ておいてください」と伝える。前もって汎用的なものを作っておくんです。


―― 自分の代わりに話してくれる、働いてくれる存在をあらかじめ作っておくということでしょうか。


常見:まさに。そうすることで説明の手間も省けますし、取材に来る人も話が分かった状態で来てくれるようになるので、「前にもこの話したな」と時間を無駄にしている気持ちにもならないですし、お互い効率的なんですよ。


専門分野のニュース・時事ネタをキャッチアップしたら、ブログに記事を書くようにしている(ブログ:陽平ドットコム~試みの水平線~

嫌われない「時間の主導権の握り方」


―― 常見さんの時間哲学で仕事の進め方を見直していくと、時間の主導権を握れるようになりますね。


常見:これを実践しても、「俺は時間の主導権を握ってるぜ」なんて態度をしてしまったら、人は離れてしまいますけどね(笑)。


―― 自身で主導権を握りつつも仕事相手を嫌な気持ちにさせない人と、相手を振り回してしまう人の違いはどこにあるのでしょう?


常見:僕の話で言うと、僕って傲慢そうに見えて実は謙虚な人間で……自分で言うなって話なんですけど(笑)。「この方がいいですよね~」って話を振って相手に気付いてもらったり、賛成してもらえるような話し方をしたりすることは意識しています。


―― 確かに、そういう話し方をしてもらえると「強制されている」という気持ちにはならないですね。


常見:僕は、仕事って「時間とお金を使って関わっている人みんなで遊ぶもの」だと思っているんです。だから振り回している感じがないのかもしれません。まあ、「時間と金を使って遊ぶな。真剣にやれ」って怒られそうですけど(笑)。でもやっぱり、一緒に仕事をする人には気持ちよく時間を過ごしてほしいですよね。


* * *

常見さんの「時間が美しく流れるようにする」 という時間哲学。「優先順位付けをする」「目指すクオリティーを定め、時間設定をする」「先回りして効率化」――自身が営業、採用、広報とさまざまな仕事を経験する中で得たこれらのノウハウは、「働き方改革」と称して効率的な働き方を求められる昨今のビジネスパーソンにも、きっと役立つであろう。


ひょっとして、常見さんはこの「時間哲学」を仕事の領域を飛び越え、家事や育児にも応用しているのだろうか。それとも仕事とは別の「家庭版時間哲学」を持っているのか。後編では、家事や育児、そして趣味などのプライベート時間の使い方、仕事とプライベートの両立術などに迫る。


【後編はこちら】
こだわりは、「仕事の時間が美しく流れているかどうか」―― 働き方評論家・大学教員として活動する常見陽平さんが語る「時間の使い方」(後編)


取材・文:佐野創太

 

取材協力:常見陽平

 

1974年生まれ、北海道札幌市出身。現在は、千葉商科大学国際教養学部専任講師・働き方評論家・いしかわUIターン応援団長として活動。一橋大学商学部卒業後、リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランスでの活動を経て、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。会社員時代に一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。労働社会学を専攻としており、大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。

社畜上等!: 会社で楽しく生きるには

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