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こだわりは、「仕事の時間が美しく流れているかどうか」――働き方評論家・大学教員として活動する常見陽平さんが語る「時間の使い方」(後編)

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何事も全力に見える人は、どんな時間の使い方をしているのだろうか。仕事における「時間の使い方の秘訣」を常見陽平さんにお伺いしたところ、「いかに時間を美しく流れるように設計するか」をモットーにしていることがわかった。(詳しくは、前編を参照)今回はそんな「時間哲学」を家事や育児、そして趣味などのプライベートにも活用しているのか、さらには仕事とプライベートの両立方法・休み方について伺った。仕事・プライベート両軸から常見さんの「時間」に対する考え方に触れることで、見えてきたものとは……?


【前編はこちら】
こだわりは、「仕事の時間が美しく流れているかどうか」―― 働き方評論家・大学教員として活動する常見陽平さんが語る「時間の使い方」(前編)

家事と育児の時間は「命の時間」


―― 前回の記事で、常見さんの仕事における「時間の使い方」をお伺いしましたが、いつも忙しそうな常見さんにプライベートの時間は存在するのでしょうか?


常見さん(以下、敬称略):プライベートの時間は存在するのですが、仕事はついつい受けてしまいますね。僕は、仕事に対して「時間が美しく流れるようにする」の他に、「ギャラを聞かない」という哲学も持っています。もちろん「もっと断った方が良いぞ」とか「断れば他の仕事で単価が上がるぞ」とか、私が安いギャラで仕事を受けることで若い世代にチャンスがめぐってこないのではないかとか、いろんな考え方があると思います。


ただ、僕は「頼まれ事は試され事」だと思っているんです。今まで相手をしたことのない人の前でプレゼンする機会をもらったら、「自分の幅を広げるチャンスをもらっている」と思ってチャレンジするので、どうしても忙しくなってしまうんですよね。


―― でも、断らずにたくさん仕事を受けていると、ご家族にも心配されませんか?


常見:されますね。家の用事と仕事の繁忙期が重なってしまうと、特にあります。例えば、年末って講演会の依頼が多い時期なんですよ。


―― 「来年の展望」など、未来予測をテーマとした講演会が増えますね。


常見:基本、仕事は受けているのですけど。この時期は家事とバランスを取るようにしていますね。できる限り家にいるようにこだわっています。


家事には心理的負荷があるんですよ。一人に負担が集中すると、「なんで私だけが家事しているの?」みたいになってしまう。最近こだわっているのは、「週末家にいる時は、娘を半日外に連れ出す」ことです。あえて妻を連れずに行きます。そうすると、その時間は妻が休めますよね。自分だけの時間を過ごすこともできるし、寝ることもできるようになります。


―― 家事についても、「時間が美しく流れているか」を意識する考え方は適用できるのでしょうか?共働き世帯も増えてきているので、仕事と家事のバランスの取り方は今や多くの人たちの目の前にある問題です。


常見:家事も同じです。絶対に外せない家事の予定をいかに入れて、そこに他の予定を寄せていくかです。後は、「家事や育児が優先なんだから」って、仕事の優先順位を下げて、割り切るのも一つの考え方なんです。仕事はサボったら怒られるか、自分の評価が下がる「だけ」なんです。つまり誰も死なないんですよ。でも家事、育児をしないと子供が死ぬ可能性があるのです。誰かが傷ついてしまうこともあります。


―― 家族のことは取り返しがつかない可能性がありますよね。特に子どものことは。


常見:そう考えていくと、優先順位は明確になりますよね。仕事より家事や育児が大事になってくる。そして、大事なことの中でも、さらに優先順位をつけて、例えば「朝ごはん製造タイム」とかを決めておくんです。飽きないように、「この日はこれを出す」とかも決めておきます。僕は、まとめて作るようにしていますね。


―― ご家族の分も常見さんが作っているんですか?


常見:作ってますね。これも「そこまでやらなくても……」って言われることもありますけど。子どもが泣き叫ぶ中で料理をするって大変なんですよ。だから、レンジでチンすればOKな状態にしておくんです。


―― ご家族とはどういった基準で分担されているんでしょうか?


常見:「お互いが得意なことをする」のには、こだわっていますね。


―― 仕事の優先順位付けと同じように、家事も優先順位付けしていくんですね。優先順位の最上位は「家族が傷付かないように」と。


常見:そう。そこはもう仕方ないなという感じです。時には「お願い、仕事させて!」って思う時もあります。でも、「命が一番大事」ってところが基準ですね。


「家族が傷付かないように」を第一優先に、仕事と家事の優先順位をつける常見さん(写真引用元:私をイクメンと呼ばないで:陽平ドットコム~試みの水平線~

「がむしゃらに頑張る」を見直してみる


―― お子さんが生まれて、仕事の仕方に変化はありましたか?


常見:家事・育児と仕事を両立させるために、仕事は中長期で考えるようになりました。40歳になるまでは、よく不摂生していたんです。今もたまにありますけど(笑)。でも、最近は「心も含めた長生き、健康こそが最大の武器」だと思っています。だから肉体改造もしましたし。一生、働くんだろうなと思っているので。


―― 20代や30代の人は、「今こそ頑張らなきゃ」と思ってしまいがちだと思うのですが……焦りすぎて、つい短期的な目線になってしまうというか。


常見:僕は、若い頃の頑張りを否定しないですよ。


―― 常見さんは、『サラリーマンの新しい掟 下積みは、あなたを裏切らない!』という著書も出されていますよね。あれは、「下積み」というマイナスイメージのある言葉を再定義し、向き合わせてくれる本でした。


常見:仕事に揉まれる時期があるから、物事の本質が見えてきたり効率化が大事ということに気付けたりもします。でも、「ちょっと待てよ」と。


例えば営業職ならば、「そこでしゃにむに頑張っても、他の営業と一緒なんじゃないか」って自分に問うべきなんです。物量を増やす以外の勝ち方は何なのかっていうことを考えるべきです。そのままの働き方では家族ができた時、子供ができた時に両立できなくなってしまいますよね。逆に言うと、この制約ができた時が「自分の仕事を見直すチャンス」でもあるんです。


―― 家事や育児は、決して「仕事の足かせ」ではないと。


常見:制約を意識すると、がむしゃらに頑張ること以外の、工夫すべき点が明確になるんです。それは「みんなが持っていない知恵を身につける」とか、「何かと何かの掛け合わせで新しいものを作る」とか。周りと差をつける工夫のヒントはたくさんありますよね。


―― 人と同じ頑張り方をしても、同じ結果しか出ないですしね。


常見:僕は「自分が直面しているこの困難は、過去に誰が乗り越えたのか」を考えることもしていました。自分の悩みは、他の誰かが既にクリアしている可能性があるんです。


僕の例ですが、僕が著者としていかに生き残っていくかを考えた時は、全て音楽業界を参考にしています。今の音楽業界には聴き放題サービスもあれば、パッケージからライブへ、という流れもあります。「変化した時に、何が消えて何が残るか」はとても参考になるんですよ。その流れを知っていると他の人と同じ動きにならないので、生き残れるようになります。

趣味から学びながらも、「自分がやった方がいいこと」を探す


―― 常見さんは音楽もお好きですもんね。他のジャンルからも学ぶ、と……。


常見:もちろん、同じジャンル内で謙虚に学ばないといけないことはたくさんあります。ですが、そこは僕より究めている人もいるし。だから、僕は違う切り口を提供するんです。


―― 仕事も家事も育児もある中で、常見さんは趣味も満喫されていますよね。例えば、ポール・マッカートニーのライブに行かれたり……。


常見:趣味は大事ですね。浪費以外の何物でもないようで、金銭的・時間的に無理してでも、その場にいたことで人生は楽しいものになりますから。


―― ライトに楽しめる趣味を持っていた方が良いのかもしれませんね。


常見:そう!公私混同は良くないと思いつつ、趣味から得られるものは必ずあるはずなんですよ。僕にとって音楽は、消費者を観察したり、接点を持ったりする場だとも思っています。


―― 常見さんは、ミュージシャンの方にもインタビューされていますよね。ANTHEMの柴田直人さんへのインタビューを拝見しました。


常見:あれは嬉しい経験でした。バンドという厳しいプロの世界で生きている人が、僕の仕事に対して「プロの仕事だね」って言ってくれたんです。「僕にしかできないこと」まではいかなくても「僕がやった方がいいこと」が何かは、常に仕事の時に考えていますね。


はっきり言って、僕がミュージシャンのインタビューをするのは領空侵犯みたいなものなんです。音楽のジャンルで言うと、名だたる音楽評論家と呼ばれる方々がもう既にいますし。ミュージシャンと既に関係性を培っていて、新譜が出る度に決まった人がインタビューするとかね。なので、僕は自分が楽曲の解説どころか、質問をすることすら失礼だと思っているんです。だからあのインタビューで言うと、「バンドや柴田さんの分岐点はいつでしたか?」と聞いてみたり……僕は、その人のライフヒストリーやキャリア形成に興味があるし、それを聞こうと思っています。


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休むことは「仕事」であり、「勇気」である


―― 最後に改めてお聞きしたいのですが、常見さんは果たして休まっているのでしょうか?24時間365日、常に動かれている印象さえあります。


常見:「この日は休む」っていう日をきちんと作っていますし、僕は毎日6時間は寝るようにしていますよ。移動時間には昼寝していますしね。15分のタイマーで昼寝をするのが、あるあるのリフレッシュ法です。疲れが取れるというよりも、心がふっと軽くなるんです。


―― 心が軽い状態であれば、気持ちよく過ごせますよね。


常見:そうそう。良い心の状態で過ごすことは、「時間を美しく流すこと」でもあるんです。土日の過ごし方も同じですね。休みの日はできるだけ平日よりもっと寝て、休めるようにしています。あと、娘や家族との時間は一番大切なんですけど、それだけだと疲れちゃうんですよね。娘はまだ小さいので泣いたりするし。一人で休む時間を捻出するようにもしています。


―― 人といるのは、どんな近しい人であっても疲れてしまう時がありますよね。


常見:人から見て、僕は全力に見えるかもしれないけど、実はいつも8割くらいでいるんですよ。それは、「手を抜いている」ということではなくてね。「こうするともっと楽しくなるよね」って考えたり動いたりできる余白を残しているんです。


―― 2割楽しめる部分を残しているから、常見さんは忙しそうだけど楽しそうに見えるのかもしれません。


常見:そうですね。僕は全力で楽しんでいるんです。2日連続で休まないと疲れが取れなくなってきましたけどね。おっさん臭いですけど、そこはしょうがないです(笑)。休む勇気も必要です。年齢を重ねると、段々と心や身体の声が聞こえるようになってきますよ。


―― 20代・30代の若手社会人たちに伝えたいことはありますか?


常見:「身体と心を壊さないようにしよう」ということは、伝えたいですね。どんな経験も、後で意味付けができるんです。僕にも「笑い話くらいにはなるよね」という軽いものから、「自分が向いていることや向いていないことが分かった」と大きな教訓を得られる経験まで、さまざまあります。仕事の種類によっては、自分一人でやるのではなく他の人を巻き込んだ方が良いなってことも分かってきますし。学びがあれば、仮にそれが人に自慢できるものではなくても「経験したことは全て使える」し、「無駄なものはない」んです。


―― 常見さんのような方が休んでいる姿を見せてくださると、若い世代も「休む勇気を持とう」と思えます。


常見:それはありますよね。僕、いつか『情熱大陸』に出る日が来たら、研究室や自宅で15分タイマーをつけて寝ているシーンを撮ってもらいたいんですよね。やらせじゃなくてね。本当に寝ているので。


―― 常見さんも人間なんですね。


常見:普通にいつもの仲間といつもの店で飲んでいますから(笑)。普通の人間ですね。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:常見陽平

 

1974年生まれ、北海道札幌市出身。現在は、千葉商科大学国際教養学部専任講師・働き方評論家・いしかわUIターン応援団長として活動。一橋大学商学部卒業後、リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランスでの活動を経て、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。会社員時代に一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。労働社会学を専攻としており、大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。

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