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【転職最新動向:医療機器業界】「年収を上げるための転職」以外の選択肢が生まれつつある

【転職最新動向:医療機器業界】「年収を上げるための転職」以外の選択肢が生まれつつある

テクノロジーの進化や労働人口の減少によって、社会全体が大きく変化しつつある昨今。人命を預かるゆえに法規制が厳しく、他業界より変化が少ないと言われている医療の領域も例外ではありません。今回は、メディカル領域を担当しているパソナキャリアのキャリアアドバイザー 大石直也に、医療機器業界の転職動向について聞きました。

他業界から医療系サービスに参入する会社は今後も増えていく

―現在の医療機器業界の状況について教えてください。

大石:もともと法規制などの関係もあり、他業界に比べて大きな変化が起こりにくいコンサバティブな業界と言われていますが、最近は「いかに効率よく営業活動を行うか」という点に注力して改革を行う会社が増えています。
大学病院やキーパーソンとなる先生がいる病院へ集中的に営業人員を配置し、その他の病院とは対面以外のコミュニケーションツールも併用して、情報交換をするという営業スタイルへの変化が、ここ数年で起きています。

―この先はどのような変化が起きると思いますか?

大石:例えば、大型医療機器(CT、MRIなど)は、すでに日本国内ではほとんどの病院で導入されてしまっています。
世界的に見ても、国民1人当たりのCT、MRIの数は非常に多く、今以上にCTやMRIの導入数が伸びることは考えづらいです。つまり製品が売れるのは、数年に1回の買い替えくらい。
当然、製品を売っているだけだと、売上が立たなくなってしまうので、メーカー各社は機器に付随するシステムを販売したり、診断に関わるプラットフォームを作ったりして、継続的に売上を作る方法を模索している状況です。
今後は、こういった新規サービスを開発し、販売する会社がさらに増えていくと思います。

少し話は変わりますが、病院のシステムには個人情報が多く含まれているため、これまでは漏洩リスク防止のためにクラウド化などが進んでいませんでした。
しかし、2018年に「医療ビッグデータ法」(*1)が施行され、医療系データを扱う自由度が上がったため、今後は院内システムをクラウド化し、ビッグデータを活用し、新しいサービスを提供するなどのビジネスが生まれてくると思います。 当然アプリやウェブサービスを作る技術はIT企業に優位性がありますし、別業界から医療系サービスに参入する企業は増えていくでしょう。すでに、IT企業とアライアンスを組む医療機器メーカーも出てきているところです。

*1 医療ビッグデータ法:正式名称は『医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律』。2017年5月12日公布、2018年5月11日施行

―そういった変化の中で、どのようなポジションのニーズが高まっていくのでしょう?

大石:一つはWebマーケティング関連です。医療業界のWebマーケティングは他業界より遅れていると言われていますから、経験のある方にWebマーケティングのチームの立ち上げから参画してほしいというニーズが出てきています。

あとは、ITエンジニアですね。他業界よりもITエンジニアが少ない業界なので、活躍の幅は広いですし、頼れる存在として重宝されるはずです。メンバーの一人としてではなく、社内初のエンジニアとして入社するケースもあるので難しさもありますが、改革を起こせる面白さは大きいと思います。

そうやって入社した方がどんな仕事をするかというと、例えば、医療とデジタルを組み合わせた製品の開発などです。最近、HOTなワードに『オンライン診療』があります。オンライン診療というと、僻地の患者さんと医師をつなぐためのツールとして想像しやすいかと思いますが、生活習慣病の患者さんにも適用されてきています。

大石:例えば、糖尿病の患者さんは月に1回は病院に行き、診療を受ける必要があります。薬を飲んでいれば、健常者とあまり変わらない生活ができますが、月に1回会社を休んで病院に行くのが億劫で、結果、病院に行くのをやめてしまい、合併症にかかってしまうという事例も多いとのことです。

そのため、糖尿病の患者さんに対して、毎月の通院を3カ月に1度に減らし、その他の月はオンラインで診療を受ける形にすることで、医療行為からの離脱を防ぐ取り組みを進めている企業もあります。
上記はアプリケーションの話ですが、それ以外にもBluetoothの組み込みソフトウェア開発など、医療機器業界においてやるべきことはたくさんあります。医療業界の経験がない人でも、興味とやる気があればこれらのポジションへの転職はしやすい時代であると言えるでしょう。

医療機器業界の営業のあり方も、転職の仕方も変わりつつある

―医療機器業界で一番多いのは営業職かと思いますが、営業の方の転職についてはいかがでしょうか?

大石:医療機器業界の方は、ステップアップを希望して転職される方が多いですね。基本的には、営業としてやっていた方はそのまま営業として内資系企業から外資系企業へチャレンジされたり、もっと事業企画の深いところまで携わりたいということで外資系から内資系へ行かれたりもします。

稀な例ではありますが、モノを売る側ではなくマーケティングのポジションへ行かれる方もいらっしゃいますね。医療機器のマーケティングには『プロダクト・マーケティング』という概念があります。担当プロダクトの売上の責任を負うマネージャーは専門性が高いですし、その領域で有名な先生方との人脈も作れますから、業界内での地位向上が目指せます。同業他社に転職をする際も有利です。

―「足を運ぶのではなく、他の方法でお客様とコンタクトをとる」やり方にシフトしているということですが、医療機器業界の営業のあり方はどのように変わるのでしょうか?

大石:物売りとしての営業の時代はもう終わっているので、ただ商品を選んでもらえるような営業をするのではなく、病院の課題に寄り添ってサービスを提案するコンサルティング色が強くなっていくと思います。

これまでは病院に足繁く通い、先生と交流を深めることが売上や評価につながりやすかったですが、今は病院に通えば製品が売れる時代ではなくなっている。また、近年は安価な海外のディスポーザブル製品がどんどん日本にも入ってきています。そういったものと価格競争をしてもリスクしかありません。病院の経営を理解したうえで自社の製品の優位性・導入するメリットを説明できなければ、今までのように製品を売ることは難しくなるでしょう。

―そうなると、医療機器業界の営業にはどのような経験やスキルが求められるようになるのでしょう?

大石:基本となるのは、「コミュニケーション力」と「課題解決力」です。営業のスタイルが変わってきており、代替できる部分はITサービスなどに移行している今の時代、人間にしかできない提案をしていかないと生き残っていけません。

病院の課題・要望を理解し解決するためには、自社の製品、サービスがいかに導入する病院にメリットがあるのかを理解してもらう必要があります。そういった部分で病院の経営に見識があるというのは非常に重要になってきます。

ヘルステック(HealthTech)ベンチャーには、病院における医療行為を効率化してドクター(医者)や病院の負担を減らしていこうとする動きが多いので、そういった領域に興味を持っている方は他社でチャレンジをしてみるのも良いのではないかと思います。

―今後は、医療機器業界内での転職だけでなく、遠隔診療のサービスをはじめとしたヘルステックの会社へ転職するという選択肢もありうるということですね。

大石:そうですね、これからこういった事例はさらに増えていくと思います。
営業のみならず、別職種にキャリアチェンジをしたい方にとっても、ヘルステックを手がける企業、新しく取り組もうとしている会社に転職するのは新しいステップアップの手段のひとつになるでしょう。
ヘルスケア分野にこれから参入しようとしている製造業など別業界の会社に転職する方もいますし、従来のスタンダードとは異なる選択肢が出てきて、いい時代だなと思います。

―実際にそういった転職をした方の事例はありますか?

大石:ヘルステックの会社に転職した方の例としては、医療用消耗品のメーカーにいた若手の営業職の方が、遠隔診療のスタートアップにジョインしたケースがあります。毎日同じ営業先を訪問する日々を過ごし、新しいことをやりたいと考え転職を希望されたのですが、年収は若干下がったもののやりがいがあり、とても充実した様子で働いていらっしゃいます。この先、遠隔診療のニーズが高まっていくであろう状況を考えても、非常に意味がある転職だったと思います。

「年収アップの転職=キャリアアップ」とは限らない

―医療機器業界にいる方が良い転職をするためには、どのようなことに気をつけたらいいですか?

大石:年収にこだわり過ぎないことだと思います。医療業界・医療機器業界で働いている方は現状の給与がいいこともあって、やりたいことよりも『年収が高い会社』という視点で転職先を選んでしまう方が多い傾向にあります。転職における優先順位は人それぞれですが、「本当にやりたいことは何なのか」をもう少し考えてもいいのではないでしょうか。医療機器業界の仕事は社会貢献性が高いはずなのに、そういった実感がないまま働き続けて、年齢が高くなった段階で相談に来られることが多く、もったいないなという印象です。

―「年収が上がる転職=キャリアアップ」というイメージは強いですが、橋本さんが考えるキャリアアップとは?

大石:「20年後もその業界で求められている人になる」ことがキャリアアップだと思います。変化が多い時代なので、ただ商品を売るだけの営業は20年後には生き残れない。どうしたらこの業界で働き続けられるか、自分の価値を認めてもらえるかをよく考える必要はあると思います。20代から35歳ぐらいまでの間にその視点に気付けると世界が広がる可能性は十分にあります。

私たちは、ご自身がやりたいことを叶えながらも、20年後も働き続けられるキャリアを築くためのサポートができればと考えています。たとえ一時的に年収が下がったとしても、長期的に見たときに市場価値が上がるような求人をご紹介することを意識しています。

―最後に医療機器業界の方へのメッセージをお願いします。

大石:医療機器業界の今後を悲観してご相談に来られる転職希望者の方もいらっしゃいますが、変化の過程にある今の医療業界、特に医療機器業界は面白いと私は感じています。もともと変化が激しい業界ではありませんが、時代の流れにより業界の性質が変わりつつある中で、不安を感じている方もおられるでしょう。ですが、どの業界でも「安定」はいつまでも続くものではありません。

IT化により、世の中全体が変化している中で、今は新しいことをやりたい人にとっては楽しいフェーズ。明確な答えがないので、どうすればキャリアアップができるのかという悩みを抱えている方は多いですが、お話をしながら一緒にキャリアプランニングができることが、我々のサービスの価値だと思っています。
人によってはすぐに転職することが最善ではなく、「2~3年後に転職した方が良いのでは?」とアドバイスをして、キャリアを積んでから数年後に改めてご相談に来られる方もいらっしゃいます。自分の現状のスキルを確かめたり、今後のキャリアを考えたりする手段のひとつとして、ぜひパソナキャリアのサービスをご利用いただければと思います。


(取材・文/天野夏海)

〈話し手 プロフィール〉

キャリアアドバイザー 大石 直也

メーカーにて、開発職を経験した後に現職。医療業界を中心として企業担当、および医療業界ご出身の方の転職サポートを行っている。

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